「理想の本屋さん」 斉藤孝良

第1回 本屋の棚はどう作られる?

神保町界隈の本屋も
だいぶ少なくなった
 日々の中では、あまり気づかないけど、時に街の風景が変わって見える瞬間がある。
 そんな風景変わりのひとつに、街の本屋さんがなくなってはいないか。
 少し残念。
 別に大きな本屋が嫌いというわけではないが、どうもあまりにも本が多すぎて。僕の脳の許容範囲を超えているような気がしてならない。
 広大な売り場を持ち、流通している本をすべて集めるといった本屋があっても良いけど、皆がみなそうではつまらない。
 小さな本屋でいいから、本屋さんが一冊一冊目を通した、息づかいの感じられる空間が、街のあちらこちらにあるほうが素敵だ。

 話はかわるけど。僕は以前小さな本屋で働いていたので、今でも本屋の棚が気になって仕方ない。本屋へ入るたびに、本屋の目で棚構成を見ている自分に気づくという有様。
 たぶん、多くの人にとっては棚の構成や陳列方法などを考えて本屋に入る訳ではなく、瞬間に、その店の良し悪しあるいは好き嫌いを判断していると思う。
 でも、棚の構成や陳列に興味がある人のために、本屋の棚はどのようにしてできるのか考えてみたい。
 基本的に本屋の棚は、業界的な用語でいうと、平台・棚差し・面陳という陳列方法でできている。
 まず文庫の棚を例にとってみよう。

平台による陳列 出版社・著者に関わらない、
ジャンルでまとめた棚差しの陳列
面陳による陳列

 陳列方法は大きく分けて、出版社別・著者別・ジャンル別にできている。

 *出版社別は、新潮社・講談社・文藝春秋などを区別して陳列する。

 *著者別は、出版社・ジャンルの区別をこえて陳列する。

 *ジャンル別は、歴史・日本文学・思想等の下に出版社・著者に関わらず陳列する。

(ただこの方法は、非常に考えさせられる方法であって、歴史・思想・文学といったジャンル別なら問題もないが、たとえば「海」「青」といった言葉ひとつで1ジャンルができるから、魅力ある棚ができる可能性がある)

 もっとも、この中の一つで棚を作っている本屋はなく、出版社陳列ではその内に、著者別やジャンル別を取り入れている。ただこの三種類の組み合わせで棚はできている。
 僕たちはアイウエオ順の著者別を基本とし、そこからはみ出る文庫は出版社別・ジャンル別としていた。30坪クラスの小さな本屋だったので、出版社別を基本とした陳列方法は無理だと知っていたから。
 著者別陳列だが、僕たちはまず日本人作家(日本語で発表された外国人作家を含めて)と外国人作家を二分し、日本人著者の場合、小説家・エッセイスト・思想家・学者・少数のコミック作家を区別なく棚に収め、それを同一著者のなかで出版社別・シリーズ別にして陳列した。
 小さな本屋は棚空間の制約が非常に強く現れるので、すべての著者を網羅するわけにはいかない。そのため、不遜な言い方だが著者をどこまで絞り込めるか、著者を切っていけるかが重要となってくる。
 どのような基準をもって著者を選んでいくか、僕たちはどう考えていたのだろうか。
 それは、誰でもわかるように売れ行きの良い著者、コンスタントに単行本を出している著者を核とせざるを得なかった。(元文鳥堂書店)