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逃げ出すための都 | ……新東京物語 |
林 秀彦 著 | ||
四六判上製/カバー装 | ||
212頁 | ||
2001年8月発売 | ||
定価1,760円(1,600円) | ||
ISBN:978-4-901592-00-0 | ||
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- 「はじめに」より
- 戦争中の約四年間の伊豆疎開生活をのぞくと、生まれも育ちも東京だから、兎を追ったり、小鮒を釣ったりする意味のふるさとを持たず、犀星の金沢、太宰の青森などをずっと羨んでいた。
ところが、久しぶりに日本に帰り方々を旅すると、日本中どこもかしこもふるさとに感じられた。
これは不思議な感覚であり、体験だった。
(中略)
東京ですら、美しいのである。あの無個性で、よそよそしく、無秩序な価値観の坩堝と思っていたこの大都会も、結局は今度旅した鳥取の片田舎、広島の山の中、九州の漁村と何一つ変わらない同じ「日本」という『美』の中に収まって見えた。
(中略)
余命幾許を実感する老境の青春の中で、私と祖国は優しい関係に生まれ変わった。
(中略)
計算してみると、私は人生の3分の1を海外で暮らしている。いままでの精神的な情況としては、亡命者のそれに近く、亡国の徒だった。
それは軽みとは程遠い重い人生だった。
私がどれほど軽みに近づいたかの自らに科す入学試験が、この随筆集である。 - 戦争中の約四年間の伊豆疎開生活をのぞくと、生まれも育ちも東京だから、兎を追ったり、小鮒を釣ったりする意味のふるさとを持たず、犀星の金沢、太宰の青森などをずっと羨んでいた。
- 目次より
- 旅に病んで―はじめに/西洋館物語/三銭の恋文/万太郎雑感/外苑の思い出/続・外苑の思い出/逃げ出すための都―小津安二郎の東京/東京生まれの悲劇/閉塞の街/夜の六本木/憧れの町/マディソン街のパーカー/ボストンのピアノ/狼たちの都/逃げ出すための国―13年目の決断/たぎり落つ涙の味/女の都―あとがきに代えて
- 著者紹介
- 林 秀彦(はやし・ひでひこ)
- 1934年東京生まれ。学習院高等科より55年〜61年、独ザール大学、仏モンプリエ大学に学ぶ。哲学専攻。帰国後、松山善三に師事し、テレビ・映画の脚本家として活躍・「ただいま11人」「若者たち」「七人の刑事」「鳩子の海」などの脚本のほか、著書に小説『梗概』『生きるための情熱としての殺人』(創林社)、評論『日本を捨てて、日本を知った』『みだらの構造』(草思社)など多数。88年よりオーストラリアに移住。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 林 秀彦(はやし・ひでひこ)
- テレビ朝日系放映の
連続ドラマ原作
『生きるための情熱としての
殺人』- (1981年、創林社刊、絶版)
- テレビ朝日系放映の
- 小説の事実上の処女作
『梗概(シノップシス)』上下- (1980年、創林社刊、絶版)
- 小説の事実上の処女作