伊子と資盛 伊子と資盛 (ただことすけもり)
服部 満千子 著
四六判仮フランス装/カバー装
288頁
2007年12月発売
定価1,728円(税込み)
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本書絶賛の声
古典文化の豊かな教養に支えられつつ、現代の感性をもって建礼門院右京大夫の心のひだに分け入った新鮮な作品。時折り古歌と見まごう自作の歌も挟まれて、さながら歌と文の響き合う歌物語である。
歌人・小説家 水原紫苑さん
本書にある抒情のストイシズムとも云うべき旋律に強く惹かれた。作家の「私」は深く抑えられ、平家滅亡の時の潮の中に建礼門院右京大夫の姿が浮かび上がる。しかも筆致はあくまで静けさに充ちている。本書を貫くのは、「女」のヒロイズムに他ならない。
文芸評論家 富岡幸一郎さん
「二十九 わすれみず」より
 沓脱ぎ石の前に資盛が立っていた。照れかくしのようにわらっている。伊子は、資盛さま、と言っただけであとの言葉がつづかない。
 いつまでも言葉のない伊子に、資盛が口をついた。
「やっと会えたよ、かぐや姫」
伊子は答えた。
「いらっしゃるのがあまりに遅いので、月の都へ帰るところでした」
 資盛は鳥の子色に秋野の刺しゅうの直垂を着た武士の姿。父と祖父の死、敗戦などの苦労を重ねたからか大人びて見える。若さに憂いの影をふくんだ男の風情が、まるで山寺にまよいこんだ秋蝶のよう。
 後にひかえている郎党の幸村が、ふじばかまの一かかえを資盛に手渡した。受けとった資盛は、伊子にわたしながら言った。
「来る途中、あまりにきれいだったので摘んだ。君はこの花、好きだったね」
主な登場人物
伊子(ただこ)……中宮徳子の女房 召名・建礼門院右京大夫
頼子      ……同          召名・輔殿
徳子(のりこ)……高倉天皇の中宮、後の建礼門院
建春門院………平滋子、徳子の姑、高倉天皇の母、後白河法皇の后
二位の尼………平時子、徳子の母、清盛の妻、建春門院の姉
西園寺実宗(さねむね)……琵琶の名手で伊子の友達
平 維盛(これもり)……重盛の長男、平家の嫡男
平 資盛(すけもり)……重盛の次男
御匣殿(みくしげどの)…藤壺の女房取締役
後白河法皇……高倉天皇の父
冷泉隆房(れいぜいたかふさ)……徳子の妹を妻にしている、廷臣
平 重衡(しげひら)……清盛の五男
平 知盛(とももり)……清盛の四男
平 重盛………資盛の父、清盛の長男
平 宗盛(むねもり)……清盛の三男
待宵小侍従(まつよいのこじじゅう)…大宮多子、高倉天皇の女房
藤原隆信(たかのぶ)……美福門院加賀の息子、加賀は後、俊成と結婚
藤原俊成………伊子の兄の尊円の父
藤原定家………俊成の二男
著者紹介
服部 満千子(はっとり・まちこ)
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